我が家の話

我が家では、父と娘がトロフィーを数多く持っています。
父親は、老人クラブや町内会の様々な行事に参加し、そこでいただいたものです。
娘は、幼い時から体操クラブに所属していたために、大会に参加して優秀な成績をおさめた時にいただいたものです。
時が流れて、二人のトロフィーの行方はというと、両極端なことになっています。
父親に関しては、その後老人クラブの会長に就任しました。
父が会長に就任したころは、老人クラブの運営が先細りになってきたころでした。
周辺に住んでいた老人たちは多くが、自立して生活するのが難しくなり、子どものところへ身を寄せるために地元を離れていってしまいました。
老人クラブを構成する会員たちの数が減少すると、集まる会費も少なくなり、クラブで行なう行事も次第に減少し、縮小していきました。
それでも残された老人たちのために、クラブを存続しなければなりません。
父親は予算をかけずに老人たちを喜ばせるような行事を催す工夫をし始めました。
パークゴルフもその1つでした。
しかし、優勝してもトロフィーの1つもあげられない状態でした。
そこで自分がかつていただいたトロフィーのプレートをはずし、パークゴルフ用のものに貼り替えて使えるよう提供しました。
そんな状況で用意されたトロフィーのことを参加者は知る由もありません。
ただ、成績優秀でトロフィーをもらう人たちはいつも満面の笑みです。
父親は数年前に老人クラブの会長を退きました。
たくさんあったトロフィーが今ではほとんどなくなってしまいました。
娘のトロフィーは、今も自分の部屋に飾られています。
娘は進学のために親元を離れて八年になります。
たまに帰郷した時に、部屋を占拠しているトロフィーを処分してはどうかと持ちかけました。
娘は断固拒否です。
トロフィーの1つ1つに思い入れがあるのだというのです。
決して器用ではない娘が練習の積み重ねでようやく手に入れたトロフィーには、当人しかわからない思い出があるのでしょう。
そしてその時の努力が今の娘を支えているのかもしれません。
父親のトロフィー、そして娘のトロフィー、どちらもモノをとおり越して、人の心を結ぶアイテムになっています。